地方創生政策は、「まち」「ひと」「しごと」の三位一体の改革として推進されています。「地域住民生活等緊急支援のための交付金」や「地方創生推進交付金」など、平成26~29年度までに、毎年1千億円以上、計5,600億円の交付金が実施されています。各自治体では「観光振興」「生涯活躍のまち」「働き方改革」などのテーマで、地域の特色を活かした政策に取り組んでいます。こうした取り組みによって住民の生活が良くなっているのか検証する指標として、「幸福度」が注目されており、住民の幸福の追求という使命のもとに設立された「幸せリーグ」には、100近くの自治体が参加しています。
本連載では、PB地方創生幸福度調査検討委員会(事務局 パイプドビッツ パイプド総研)による全国2万人の幸福度調査結果の紹介や、委員会の有識者との対談など、「地方創生」と「幸福度」の関係性を読み解いていきます。
第1回は、「幸福度の地域間の差」をテーマに、大都市圏と地方圏で幸福度に差があるのか検証していきます。
「地方創生」を測る指標って?
多くの自治体で地方創生事業が展開されている一方で、地方創生事業によって地域が活性化したのかどうかを検討する必要があります。
従来、地域の活性化を示す指標としては、産業の状況や人口などの「客観的な」指標が用いられてきました。しかしながら、地方創生の目的は「地域住民にとって」住みやすい地域づくりであり、地方創生事業の主役は地域住民です。
そこで、本連載では地域住民の「主観的な」指標に着目し、近年注目されている「幸福度」を用いて、地方創生との関係を読み解いていきます。
幸福度ってなに?~「幸福な生活に必要なこと第1位」は健康~
そもそも、「幸福度」とはどんな指標なのでしょうか。
幸福度とは、各個人が感じる「幸せ」の程度を表す指標であり、主観的幸福感とも呼ばれています。幸福度を測ることにより、人々が日々の生活において幸せを実感しているかどうかを示すことができます。
幸福度に関する調査は、これまでも内閣府や自治体が行っています。内閣府経済社会総合研究所では、幸福度に関する項目を入れた調査「生活の質に関する調査」を平成24~25年度に行いました。東京都荒川区は平成17年に「荒川区民総幸福度(通称:GAH)」を提唱し、幸福度に関する調査を行うとともに、GAH向上へ向けた区民サービスや政策立案を行っています。たとえば、世論調査より、「幸福な生活に必要なこと」の第1位が「健康」であることも踏まえ、区内の飲食店と女子栄養大学と区が協力し、栄養バランスのとれた「あらかわ満点メニュー」を開発しました。
住民はいま幸せ?~住民の幸福度実感~
委員会が実施した全国2万人の幸福度調査の概要は、表1の通りです。
表1:調査概要
調査対象 | 全国の成人男女 |
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調査方法 | インターネットによるアンケート調査 |
調査期間 | 2017年1月25日~2月15日 |
回答者数 | 20,659 |
まずは、調査結果から住民の幸福度実感についてみていきます。幸福度実感について、本調査では1~10点(「とても不幸せ」を1点、「とても幸せ」を10点)のうち、自身に当てはまる数字を1つ選んでいただきました。
図1では、1~10点の回答割合および平均スコアを図示しました。1~10点の中で「8(やや幸せ)」と回答したのは29.20%であり、最も多い回答となりました。また、幸福度の平均スコアは6.65であり、全体的に幸せと回答している方が多い結果となりました。
三大都市圏と地方では違うのか~幸福度の地域差~
次に、図1で示した幸福度が地域間で差があるのか検証するため、幸福度について「三大都市圏*」と「地方」とに分けて集計しました(図2)。その結果、大都市圏の幸福度の平均は6.70であり、地方(6.58)よりも幸福度が高いことが示されました。
*三大都市圏:首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、中京圏(岐阜県、愛知県、三重県)、近畿圏(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)に属する1都2府10県
地方:三大都市圏に該当しない1道33県
男女の幸福度は三大都市圏と地方で違うのか~幸福度の地域差×性差~
最後に、図2で示した地域間の差をさらに性別で分け、各地域における幸福度の男女差についてみていきます(図3)。
幸福度の男女差を比較すると、どちらの地域も女性の方が高いことが示されました。また、男女別に三大都市圏と地方の幸福度を比較すると、男女ともに三大都市圏の幸福度が地方よりも高いことが示されました。男女別の幸福度について、地域間の差を計算すると、女性の差は0.13となり、男性(0.06)よりも三大都市圏に住むことで幸福度が増えやすいことが示されました。
次回は、世代間および地域貢献による幸福度の差について検証していきます。